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368 紙すきのうた:全三幕(2時間30分) |
全3幕・印刷製本されたスコア(3冊セット): |
10.000円 |
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全3幕・スコア全曲(PDF)をダウンロードする: |
5.000円 |
第1幕
美濃紙は、1300年の昔から、いつの時代も女が紙を漉いてきた。
両親を亡くしたゆきは、“武本家”の養女となり、弥助は作男として働くことになった。
女たちが唄う「紙すきのうた」が聞こえる。
当主の源三郎は、ゆきの手にする紙入れが、幻の典具帖紙という紙であることに気付き、いつか漉きたいという。
武本家で紙を漉くゆき。
弥助は庭に咲いた椿の花をゆきに届け、ゆきはすかし模様の紙に漉きたいと思う。
病弱なちえの夢は、もう一度郡上に帰って暮らすことだが、金儲けしか頭にない仙太は理解できない。
嵐の日も、ゆきは、すかし模様を工夫している。
その時、仙太が飛び込んできた。ちえが、雨の中で血を吐いて死んだのだった。
いつしか嵐は止み、暗い月が出ている。
ゆきと弥助は、幼い頃から一緒に暮らしてきたのに、心のうちを言葉にすることはなかった。
武本家の嫁になる事になったゆき。にぎわう祝言の日。
ノリウツギの木を探してほしいと言う頼みに、弥助はゆきの花嫁姿を見ることもなく、山に向う。
宴たけなわ、ゆきの悲鳴が春雪の中に消えた。
そして季節がめぐり、春祭りの日。弥助の墓前に武本家の人が典具帖紙ができたことを報せていた。
ゆきは弥助と歩いた遠くの山々を見ていた。
今日も村の女たちが唄う「紙すきのうた」が聞こえる。