篠田弘美さんインタビュー

創作オペラやオペラ・ミュージカルで多くの主役を演じるソプラノ歌手

ひとりオペラや現代舞踊家、役者との共演舞台を企画構成から出演まで手掛けられる篠田弘美さんにインタビューいたしました。

篠田弘美さん公式HP▶︎

プロフィール

岐阜県立加納高校音楽科 卒業。
国立音楽大学声楽科   卒業。

創作オペラやミュージカルで主要な役を多数演じると共に、歌唱指導・音楽監督を担当する。
代表的な作品に「紙すきのうた」「太陽をさがして」「豆の木地蔵」「八尾比久尼」
「ブンナよ木からおりてこい」「メディア」等がある。

「紙すきのうた」は初演より20年ゆき役を主演、ぎふ清流文化プラザ開館記念公演や「ひだ・みの創作オペラ」20周年特別記念公演等、6度の再々演、10公演を務める。
学校公演や美術展・病院コンサート、式典セレモニー、合唱ソリストとしても出演演奏する。

ひとりオペラとして「夕鶴」「ぞうれっしゃがやってきた」、邦楽伴奏で三役を歌い演じる「道成寺」を企画構成。
歌と現代舞踊による二人舞台「照手と小栗」「葛の葉」、ソプラノと役者による「夕鶴」を熱演し好評を得る。「葛の葉」では台本・作者を手がけた。

ソプラノリサイタルを、サラマンカホール・長良川国際会議場・岐阜市文化センター・クララザール・文化財「村国座」等で12回開催。
令和3年「ひだ・みの歌の仲間」を立ち上げ、第1回コンサート「てんぐじょう紙」をぎふ清流文化プラザで開催。

平成12年度 岐阜県芸術文化奨励受賞。
令和元年度 岐阜県芸術文化顕彰受賞。
(公財)岐阜県教育文化財団理事。
岐阜県芸術文化会議副会長。
サラマンカホール運営評議委員。
日本演奏連盟会員。

声楽を本格的に勉強されようと思ったのはいつ頃ですか?また、声楽の道を志すきっかけは何ですか。

藤掛廣幸先生と同じく、岐阜県立加納高校音楽科を受験しようと思い、声楽の基礎を学び始めました。ただ幼い頃から歌うことが大好きで、将来は歌を歌う人になりたいと思っていました。童謡も教科書の歌も、イタリア歌曲もオペラアリアにも全て感動し、感動のあまり楽譜を写譜したりしていました。迷うことなく音大の声楽科に進み、音楽に溢れた環境に浮かれていました。ドイツリートの重厚さに心が震え、フランス歌曲の神秘的な世界の虜になりました。発声を学ぶことの楽しさと大変さも思い知り、それは現在も継続しています。自分の声には限界があり、向き不向きもあるという現実を突き付けられた時期でした。より深い表現のために、演じることに興味を持ち始めました。そして日本語の美しさを深く愛するようになりました。

ご自身でひとりオペラの企画から構成、また何役か演じられる舞台に挑戦されていますが、ご苦労されたことや見所など教えてください。

作品の持つ魅力を、より鮮明に伝えたくてひとりオペラを考えました。声色を変えようと思ったことはありません。歌い手である前に、文学を理解すること、人の心に共感すること、作品全体を見渡す俯瞰力があること、細やかな所作にその人物の特性が込められていること等様々な素養が必要でした。各々の専門家に教えを請い学び、稽古を重ねました。お力を貸して下さった先生方の導きの賜物です。ご覧下さる折は、舞台全体の世界観と、声と相まってささやかな所作を楽しんで頂きたいです。一人きりの舞台が決して一人では成し得ないことを、有難く痛感しています。

藤掛廣幸作品にも数多く出演されていますね。藤掛作品の印象や、今まで心に残ったシーンなどはありますか。

先生の作品は、どれにもたくさんの思い出と思い入れがあります。

「西湖伝説・太陽をさがして」メイファン役主演
中国の音楽専門学校生の子供たちと共演、先生と中国まで練習に出かけました。
彼女たちのプロ意識に、大いに刺激を受けました。

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「ブンナよ木からおりてこい」母スズメ役
この作品でも、中国の子供たちと共演。
深く人物を表現するために、身体能力が必要なことを実感。
これまでにない複雑な心情を表すため、体当たりで挑みました。

「紙すきのうた」ゆき役主演
初演から20年あまり、主役のゆきを演じさせて頂きました。
紙すきの修行をさせて貰ったり、舞台のゆかりの地を訪ねたり、人の心の有り様を深く思考したり、ゆきを演じるためにたくさんのことを学び教えて頂きました。
稽古期間も長丁場で、共演者とは深い絆ができました。

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「豆の木地蔵」尼ちと主演
尼さんの役でしたので、お寺に行儀見習いに通いました。
所作や数珠の扱いも厳しく教えて貰いました。
何かをすることも大切だけれど、何もしなくてどう在るか、この意味をじっくり考えた作品でした。

出演はしていませんが「小さな虫の物語」の歌唱指導を担当しました。
譜読みをしていて感動して、夜中に先生にお電話してしまったことがあります。

声楽の指導にも力を入れられていますね。これから声楽の道へ進まれる方へアドバイスをお願いいたします。

好きでありさえすれば、必ず上達します。始める前に「才能はありますか?」と聞かれることがありますが、その質問を本気でなさっているのなら、声楽には向いていないと思います。
発声を確立するには何年もかかります。私も未だ発達途中です。しかも必ず安定しているわけでもありません。成長と停滞、試行錯誤を繰り返して成熟していきます。近道もありません。その度に素質がないとか才能に恵まれないと悩むのなら、歌い手になるのはとても困難だと思います。趣味で歌う法が楽しいと仰る方もあります。その通りです。でも音楽の専門家として逃げることなく勉強を続けていると、楽しさは少ないかも知れませんが、代わりに深い喜びを感じる時があります。経験した者しか分からない、得も言われぬ喜びです。若い方にメッセージがあるとすれば、「頑張って続けていたら必ず報われますよ」という事でしょうか。

合唱指導で心がけていることは何ですか。

心を一つにすることも、お互いの音を聞き合う事ももちろん大切ですが、私が一番に心がけていることは、自分の責任を果たすという点です。アンサンブルとしての作品を完成させるためには、先ず一人一人が自覚をしっかり持たなくては!音程、リズム、速さ、ダイナミクス、それらを可能にする発声力、作品の理解、自身の役割の把握等、課題は多くあります。第一に自分を磨くこと、各々のメンバーがそれを実行すると、良いアンサンブルが可能になると思います。

今後、アーティストとして、また指導者として力を入れていきたい分野を教えてください。

芸術は深いところで他の芸術と繋がっていると思います。何より自分の歌い手としての努力を前提として、文学・美術・舞踊・演劇、さらには音楽のジャンルの垣根を超えて、心揺さぶられる舞台を作りたいなと夢見ています。そのための勉強は、きっと多難で果てしないと思われますが、その一つ一つは喜びに満ちていると確信しています。